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照明と映像のはざま2

 
空調で管理されたパビリオンから外へ出ると、早朝らしい涼感を伴う風が肌にやさしく、昼間に襲う40°に達するだろう過酷な環境をつい忘れさせる。2005年当時、愛知で開催された博覧会の会期中、照明のプログラム調整で訪れたものの、作業は朝まで続いた。いまいましい古びたWholeHogとの格闘だった。疲労もあったが、なにより少しその場を離れたい気持ちが強く、外の空気を吸いたかった。

朝露で濡れた樹木と、土の香りを感じながら、ふらふらと歩く。夜明け間もない空気は気持ちいい。博覧会のテーマは自然との共存だった。つい先ほどまでいたコントロールルームのコンピューターのうなりが耳に残っているものの、外のまばゆい光とひんやりした空気は心地よく、コンピューターに支配された頭は、やや生気を取り戻した気がした。

正直、あまり好きではないHog2のプログラムだった。仕事自体はプログラムという立場だが、実際は照明をデザインしながらのプログラミングであり、部分的には直感的に作ったところもあって確かに人に引き継ぐレベルの整理されたプログラムとは言えなかった。
フランス人に嫌みを言われながらも、なんとか引き継ぐことができたときは、安堵感で気分も楽にはなった。

日差しはすでに強くなりつつあり、会場のセンターに位置する大きな池の水面が、きらきらと光を反射させ、眩しさに目を細める。ふと、池の端に立ったとき、そういえば誰かが、カナダパビリオンのショーはすごいと話していたことを思い出した。「せっかくだから、開場したらカナダパビリオンに並んでみようか?」

この頃、幸運なことに、複数のパビリオンに関わる事ができ、あるパビリオンで、はじめてカタリストV3をプログラミングして、念願だったアイコンMの未来 に近づいた気になっていた。しかし、やってはみたものの、何か腑に落ちない。 その当時のG5MACのパフォーマンスだけでなく、その演出や使い方そのも の、そしてデジタルライトの設置を一寸の狂いもないようにミリ単位で施工する設備屋さんのやり方についても、舞台とは異なる何か異業種の窮屈さも手伝い、 どうしても違和感を感じずにはおれなかった。ただ、それでも、きっと博覧会が終了した後に、デジタルライティングの世界が拡大するのではないか?という漠 然とした焦りのようなものを感じていた。 
やがて、定刻となり、開門されるとそれまで広く、どこかさみしい印象だった会場の世界は一変した。人気パビリオンに駈けてゆく人々をよけながら、目的のカナダ館についたとき、そこにはすでに列ができていた。

アイコンMで見た夢は、確かにデジタルゴボを搭載したムービングライトの進化だった。
しかし、その未来の先に出来たDL1とCatalystを操作するとき、どうしても違和感を感じてしまう。いや、もっと過剰な期待を持ってしまい、デジタ ルゴボよりももっとユニークな映像演出をイメージし始めた自分に気づいていた。「ムービングプロジェクターじゃないんだ。 メディアサーバーそのものに、 別の可能性があるような気がする。。しかしどう使えばおもしろいんだ」

自問自答しながら、カナダパビリオン内に入ったとき、目に入ってきたのは、いくつものディスプレイ画面が埋め込まれた壁。そこに流れる映像はシングルのコ ンテンツのときもあるが、すべてがつながりマルチスクリーンになるときもある。そして壁面を覆うカットクロスにも映像がプロジェクションされていて、その 映像によって壁面のテキスチャーが変化しているように感じた。 

「スクリーンの枠を越えて広がる感覚」 

先に入った観客が紗幕の向こうで巨大なスクリーンに投影される映像を見ているのがこちらからもわかる。そしてその映像がこぼれてこちらのカットクロスにも 映る映像。それは映像を照明として使っているかのような錯覚。明るくて精彩な映像を出力するプロジェクター。それによる照明効果とセットデザインとの融 合。。デジタルライトという装置など使わないでも魅せる技術は、メディアサーバーにこそ新しい未来があると感じた瞬間だった。これはテキスチャーを映像で 表現しているのか。

やがて順番がきて、紗幕の前にある大きなスクリーンで映画のような美しい映像を見る。その中に映し出されるカナダという大自然と共存する人々の暮らし。大 自然が織り成す美しい世界感とそこに生きる人々の幸福に満ちた表情。 美しい。。その完璧に演出された映像とともに、その空間を氷壁や森林の空間へと変化 させる映像と照明の融合。。空間に満ちる感動がそこにあった。。

「映像の表現力って、なんて力強いのだろう」

そこにはやがて誕生するカタリストV4で実践することとなる映像演出の形がすべて揃っていた。映像プロジェクションと照明の境界で生きてみたい。モーションイメージライティング そんなキーワードが自分の頭の中を駆け巡った。パビリオンの外はすでに真夏の日差しが照る昼になっていた。 2005年の夏。。

at 18:20, MRTusami, 映像

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